2011年11月29日火曜日

逝きし友

「ひこばえ」19号より

友逝きて信者ら送る讃美歌にわれも唱和す夜の教会

涙して孝行足りずと挨拶す長兄の声母に届くか

アグネスとう洗礼名を頂きて天に召さるる友の魂

赤トンボ飛び交う空の気は澄みてひととき我の脳は藍色

わが見立て百歳保証のかの媼八十にして病を知らず

トンボ

「ひこばえ」18号より

音信の途絶えたる元同僚ら次々電話で台風見舞

想像を絶する雨を叩きつけ神々の住む山を破壊す

山にても津波の力彷彿と命はぐくむ水も怒れば
        ―平成二十三年十二号台風―

滝昇る遺伝子を持つ鯉の稚魚水槽飛び出し死のダイビング

驟雨去りわずかに濡れし舗道にてトンボの番産卵しきり

FUKUSHIMA(フクシマ)

「ひこばえ」 17号より  

夏の宵銀河横たう黒き空明くれば紺碧白き雷雲

往時には汗する人らの焼酎が一升瓶でわが卓にあり

FUKUSHIMAは怖ろしき地を代名す
世界語となりしTHUNAMIと並ぶ

目高らは頂きし餌を喜びて感謝のまなざしわれに向けいる

老い友は飼いし鰱(たなご)を分けくれる少年のころとなにも変らず

2011年7月1日金曜日

小さき命

原発は怖ろしき毒撒き散らし為政者どもは政争の日々

冬を越し生きてようやく春迎うたかが目高の小さき命

牛蛙われの気配に感づきて傍若無人の恋の歌止む

歌づくり「鯉」と打たんと変換に「恋」と表われ暫し眺むる

足焦がす玉砂利踏みて飛び込みし遠き紀の川夏のきらめき

TSUNAMI(ツナミ) その三

歌の題「メルトダウン」としてみるもその言の葉に心が竦む

駄々をこね暴れ放題の原発に政治家どもは権力争い

海人の命と生計(たつき)奪いしはクラーケンとう魔物の仕業か

目覚めては窓開け放つ鯉は無事五月さわやか津波も来ない

鉄線は濃い紫の一輪を何もない朝開きて誇らし

TSUNAMI(ツナミ) その二

災害は政争の具となり被災地を訪(と)う為政者のなにやら空し

流されし四十余万の自動車にチャイルドシートも積まれしままに

わが池に青鷺来ぬは巣作りか地震に避難の家族かなしき

戴きし皇帝ダリアを植えました二〇一一ツナミの春に

おおいぬのふぐりの群は風にゆれ夏の訪れ律儀に告げる

TSUNAMI(ツナミ) 

世界語となりし「ツナミ」は名づけたる母国に牙剥き破壊を尽くす

海神はかくなるまでになぜ怒(いか)る核を扱う民は悪いか

窓のそと春の光が眼に沁みて内のテレビは被災を映す

濁流の津波を眼下に子は父に「逃げるの」と聞き「宿題は」と問う

被災地の卒業式の映像に親を亡くせし心はうつらず