2016年12月4日日曜日

石蕗(つわぶき)



山茶花は天の馬より白く咲きわれの(なずき)を覚醒させる

百舌の鳴く金切り声に目覚むれば日本晴れの今日が始まる

猫の世に孤独はあるか摺り寄りて温もり寄する冬を間近に

鶺鴒がわたしの前を横切りぬ宇宙の摂理と関係もなく

いつの間に黄色を放ち石蕗は狭庭の隅で存在示す           

         

2016年11月7日月曜日

わたくしがいる


秋の峡絵に描かんとキャンバスに対うわたしの真剣な顔

台風に倒れし竹を花筒にとごりごりごりとのこぎりを引く

いつからか猫との縁切れぬままなくてはならぬ存在となり

秋晴れの正遷宮に若者が続々現れ過疎は返上

月に立ち地球を望めば確実にわたくしがいるいと小さいが

2016年10月11日火曜日

雑草


天国へいざなう声か鈴虫は闇の時空を独り占めする

ふるさとへ帰らんとして駅に立つ吾のまぼろし昔日となる

じじばばの墓石の前に佇めば我は少年かまどの温もり

家猫は気楽なものよ餌を食い鼠も捕らずまた餌を食う

とき来れば可憐な花を咲かせては雑草と呼ぶなと抗議している

遠花火


遠花火聞こえてくればあのあたり踊りにまぼろし浴衣の少女

ひぐらしの鳴く夕暮れは人恋しカナカナカナとちちはは呼ぶか

盆の宵子とのいさかいにているとしそうめんしようと孫娘(まご)

独り身は気楽でいいと見栄を張り香水などを付けて外出

寄せ書きの日の丸帰る玉砕で父を亡くした息子の元へ

野鳥


夏草の覆い尽くせるわが庭に亡父の化身か一羽の野鳥

刈り機持ち参上するは同級生畑に繁茂す草を見かねて

ほととぎす暮れても鳴いて血を吐くか蜥蜴を喰らい托卵もして

手に止まる糸とんぼの愛おしくお前は何時(いつ)に生を受けたか

鬼百合の鬼のごとくに咲いている鬼という名に恥じなく凛と

郭公


裏山に郭公が啼く托卵とう悲しき性を疎まれて尚

深海の蒼より濃ゆき四片(よひら)にも涙雨降る夜昼となく

東南の空に火星の行く見えて赤い目をした魔王の如し

故郷(ふるさと)の地球は生き物気まぐれに火を放ったり地をゆさぶったり

広大な銀河を旅してようやっと地球に帰り夢より覚める

炎巻く


炎巻く窯口に薪投げ込みて出来栄え思うか匠のひとみ

窯炊きて三日三晩の徹夜にて陶芸翁の皺深くなる

薪なげて焔渦巻く登り窯三日三晩途切れてならず

雑草に花のつけいてためらうは刈らないでくれと懇願されて

姪からの転居の報せ単身の夫の元へ娘と共に

山桜


筍を掘る唐鍬にざっくりと手ごたえのあり夕餉の楽しみ

(ろう)じろ我ここにありと山桜笑える山のあちこちに咲く

鶯の上手に鳴きて季はすすみ木々の葉先がきららに光る

いつよりか猫との同居腐れ縁いうなればこれも一期一会か

集まりて笑顔を見せる老人ら八十超えてまだまだ生きる

2016年3月31日木曜日

春の憂鬱


パソコンをたたく手に乗るハエ一匹夢か(うつつ)かなかなか消えぬ 

晴れた日に春の憂鬱襲い来る鶯聞きて猫を撫でやる

老人ら顔顔顔の輝いてまだまだ生きるまだまだ死ねぬ

池の鯉ふらりふらりと泳いでる春はまだかと催促するがに

テロの(むれ)イスラム国へ行こうとし捕縛されしは和歌山育ち

コーヒー


出たがりて寒い夜半に送り出す猫を満月しらじら照らす

如月の寒強き日に椿咲き山茶花も咲く狂う地球か

(しし)肉を持ちくれし友この美味いもの一家の皆が食べないという

老人の体操の会に参加する女性の数多に圧倒される

コーヒーを一日四杯でやめよとう五杯目からの結界犯さん

寒波くる


如何せん時は止らず元日は後ずさりして遠ざかり行く     

新年に特攻隊を詠う友半年前からためていたとう

これでもかこれでもかとて寒気くるそれでも山茶花紅を誇れり

猪はいつ来るのやら暗闇に目を凝らしても姿は見えず

雪空を仰げば晴れ間見えました電線に鳥二羽おりました

2016年1月27日水曜日

愛猫 小春


凍える心臓


ふきすさぶ師走の風は音を立て凍える心臓いつ止まるやら

年の暮時雨心地にピザを食う晴れ間の見える空を眺めつ

紅色の山茶花今年は不作にてひとつ咲いたら次に一つと

家猫は高齢な上この寒さ細き声で鳴いて擦り寄る

鯉たちは微動だにせず固まりて長いながーい冬を越すべく

平等院鳳凰堂


あこがれの西方浄土をあらわして平等院は硬貨に刻む

鳳凰は万円札に取り込まれあまねく人の世界を照らす

宇治川に添うて歩けば千年のむかしの村にタイムスリップ

これでもかと店の立ち並び天下の宇治茶を誇らしく売る

宇治の地のホームに移りし友の顔農婦変じて色白となる

村祭り


後ろから管を通され大腸の壁を見られるすがたの屈辱

鰯雲高く泳いで秋を知るよろける蟷螂これも秋の日

村祭りカメラ片手に餅もみの青年たちのあと追いかける

声のする方向見ればきみちゃんが元気な姿で畑を耕す

わが猫は我のベッドでひもすがら眠り込んでは空腹で起き


満月仰げばに問いかけるカリフォルニアの見たかと

星空を仰げば無限の大宇宙月は一番近い天体

秋日和車を駆って紀伊の山たどり着いたる熊野本宮

老人ら陶芸作りに挑戦す土こねる手に力を込めて

紋白の番が宙を舞いあそびこの世の秋を謳歌している