2014年10月7日火曜日

いかだ下り


激流のいかだ下りの船頭はお客の悲鳴に笑顔で応える

遠く来て熊野本宮八咫烏サッカー少年両手を合わす

朝顔の咲きて雷雲真青な空に湧き上がる原爆の日に

歯が痛く鬱々としてやけになり猫の尻尾を掴み振り上ぐ

蓮の池水面も見えずに繁茂して夏の終わりに花咲き狂う

南無阿弥陀


むらさきの小さな蝶がちろちろと記憶の闇に棲みついている

わが猫のぐったりしている様を見よ地獄の使い傍に来ている

南無阿弥陀友の行くのは黄泉の国暑さ寒さもなかろう国か

梅雨明けと気象庁より告げられぬ梅雨は明けても心は晴れぬ

夜のうち田を掘り返す猪の空腹抱える家族を思う

若き女性


若き女性                  実宝教雄

歌に言う「めだかの学校川の中」ガラスの水槽平成の今

夏近く雑草繁茂する畑は昔々は父祖の水田

悠然と翼広げて青鷺は茜の空を飛び去りて行く 

唐突の若き女性の訪問に保険屋と知ってもときめいている

家猫の他人にすり寄りわが嫉妬かすかに覚える梅雨の晴れ間に

星星


星星を見上げしのちに戸を閉ざす睡眠前の慣わしとなり

わが里に命のるつぼ魂をうつ百花の咲きて鳥競い鳴く         

わが猫は夜の異界に消えてゆく帰り来るのは明け方近く

緑濃く鶯の声いつか止む子育てなるか山のどこかで

「新世界」交響楽にアメリカで祖父働きし農場思う