2010年12月11日土曜日


枯蓮(蜂の巣状の花托に種が宿っている)

万葉古道

短冊にしたためし歌宅配に文化祭にと町から届く

霜害の柿の不作に農は泣く関税廃止の風吹く中に 

鯉の稚魚餌を欲る仕草に心すも鬼ともならん水ぬるむまで

万葉の古(ふる)道(みち)行くに妹(いも)連れぬ男(おのこ)の旅の侘しさ想う      

半島の悲劇をよそに暖房の部屋に籠りて余生愉しむ

2010年11月24日水曜日


バッタの夫婦(上が雄)

バッタ(紀の川の堤防にて)

恋のアリア

    
溜池にいのち失う人ありて百舌きりきりと秋の気を裂く

秋冷にスイッチ入れて聴き入りぬ澄みしソプラノ恋のアリアを

遠住みの娘にきびしく叱咤さる酒を減らして体厭えと

秋桜の一片の白舞い落ちぬ秋霖けぶる午後の瞬き

尻尾立て吾を睨みいし螳螂の老いて茶色の身を地に這わす

2010年11月3日水曜日

異常気象

   
近頃の異常気象に戸惑いて幼き頃の記憶乱さる

わが里に猪下(くだ)り来て鹿までも猛暑は山の獣追い出す

雷鳴に覚めて眠れず見るテレビなにやら反日デモのさわがし

稲作に祖(おや)ら命の溜池は花を楽しむ蓮池となる
 
学び舎の地下に出できし住居跡里の営み二千余年に

2010年9月13日月曜日


光輪(道の駅“紀の川”にて)

狸一匹

<22年度紀北短歌連盟群作コンクール受賞作品>

毛の抜けし狸一匹徘徊すわびしき村にも隔てなき春

初午の柴燈護摩供に投ぜらる万の願いに我も一願

蕗の薹かなしきまでにほろ苦くふと気にかかる遠住みの子ら
    
コスモスは止むなき雨に彩乱れローランサンのパレットのよう

緞帳の上がるがさまに霧晴れて装う山々喝采を呼ぶ 

火の山は沈思の山と変わりたり柿はもみじ葉掃い尽くして

青鷺を連れてわが師は逝き給う奥の高野のさらなる遠(おち)へ

幼子の重さ抱きあげ衰えし我が体力の程合いはかる

ペガサスのつばさ広げて天かける形の雲の黒くひろごる

月影に遠住むひとを映してはしたたかに酔い時空を超ゆる
   

たった三日

   
この夏は田舎に来るかと問うメール電波は黙って横浜に飛ぶ 

わが娘たった三日で帰り行く駅の階段孫と手を振り
                                
猛暑避けクーラー室にとじ篭る冬眠ならぬ夏眠と称して

向日葵はみなうなだれて見つめいる地面が雨に濡れるを待ちて

わが国に世界で一の長寿居て国定忠治と同い歳とか
   

2010年9月8日水曜日

二番子

   
紫陽花の咲き盛る道嬉々としてランドセルの児ら傘揺らし行く

紫陽花の青の深きに吸われゆく村の悲劇の沈める底に

この夏は田舎に来るかと問うメール電波は黙って横浜に飛ぶ

一番子巣立ちて空きしを整えてつばめは真夏に二番子を抱く

東京にあこがれのぼりし若き日の記憶消せずに田舎に棲まう
   

2010年7月5日月曜日


芍薬

味彩

味彩          実宝教雄
雨足の速まる池の蓮の葉に真珠の玉が膨らみてゆく

あじさいはわがふるさとの味彩か慈雨を降らせて蝸牛(かぎゅう)養う

紫陽花の青は深まり叢(むら)底に村の悲劇の数多が沈む

早朝に子らの巣立ちをうながして燕ら騒ぐ今日は大安

わが祖なる人類生れしアフリカに蹴球競い世界が集う
あああ

紀の川河畔

月下美人

2010年6月30日水曜日

怪鳥

 怪鳥 実宝教雄
玻璃に這うすずめ蛾の身を巨大なる怪鳥と見るポーの一瞬

連休の渋滞映像愉しみて日がな寝そべる我の連休

睡蓮の池に一枚蓮の葉の浮かびてやがて蓮池と化す

ベトナムの兵士のごとく地下道を土竜は穿つ休耕田に


デモ連ね「返せ」と叫びしとき古りて尚も変らぬ美(ちゅ)ら海の願い
あああ

2010年5月8日土曜日


 和歌山県橋本市子安地蔵

藤娘 和歌山県橋本市 子安地蔵

ためらいがちに

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妻連れて筍堀にやってきたやんちゃ坊主は白髪も増えて

名画見て打ち震えたるわが魂は悪魔が持ち去りゆるり生きいる

晴嵐に万象騒ぎEメール叩くわが胸穏やかならず

さくら花ためらいがちに枝を去りぬ一気呵成に散ればよいもの

睡蓮はためらいがちに赤き芽を水面に浮べ春日集むる
aaa

2010年4月10日土曜日


吉野上千本(写真上部)


吉野中千本4月8日撮影

スローライフ

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スローライフついには夜昼取り違え目覚めし朝は暗くなりゆく

明け方に帰りし猫は餌を欲りて不機嫌な吾に遠慮げに鳴く

畦道を若き雄猫小走りに出歩いている思惑ありげに

蓮池に冬を越したる緋の鯉は誇らしげにもゆったり泳ぐ

一山に梅の香の包む道の辺に黄水仙は凛と花上ぐ
aaa

2010年3月6日土曜日


奈良県賀名生(あのう)梅林1

奈良県賀名生(あのう)梅林2

2010年2月28日日曜日

青鷺連れて

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青鷺を連れてわが師は逝き給う奥の高野のさらなる遠(おち)へ

花園という里にはたらき鷺を詠み祈り捧げしあなたは遠きに

わが終の師と決めいしに身罷りて仰げば空に黒き雪雲

これからはいただくは無し山畑の葉張り豊かに重き白菜

母恋の歌との出遭いに縁(えにし)得て師との十年まばたきの間に

在りし日のことの数多は消え行くも脳にとどめん確かな幾つ
 
眺めいる川はいちずに流れゆく新しき水つねに注ぎて
aaa

2010年1月19日火曜日


           烏瓜の終焉

         秋明菊の綿毛

      枯れ蓮

冬将軍

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落葉みな掃き清められ歌聞こゆ八人通う峡の校庭

つながれし犬の咆哮谺して眼下に寄り添う過疎の屋根見ゆ

火の山は沈思の山に変わりたり柿はもみじ葉掃い尽くして

小春日に鳥の声なく鎮もりて冬将軍がしのびより来る

ご帰宅のやんちゃの猫のあちこちに草種付くを櫛で梳きやる

ご近所の連れ来る犬にわが猫は敵意あらわに吹いて逃げ散る

亀逃げてこころ安らか耳につく「逃がしてやれよ」の言葉も消えて
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