2008年12月9日火曜日




好古園(姫路城脇 08.11.24撮影)



国宝姫路城(08.11.24撮影)

山茶花の白

11月「新緑 」
目くるめく紅葉の海をかき分けて高嶺の道を軽やかにゆく

緞帳の上がるがさまに霧晴れて装う山々喝采を呼ぶ 

朝まだき眠けまなこに玄関を開くれば眩し山茶花の白

霧含む冷たき雨に散りいそぐ楓は紅く瀧を装う

白鷺の異名いただくその城は桜紅葉にまことに白き

鴉らは旧主の魂を護るがに天守の空を騒ぎ飛び交う

折りしもの時雨模様をうらむまじ濡れし紅葉こそ美(うま)しきものを

2008年11月14日金曜日


奈良県吉野群 天川村 御手洗(08.11.8撮影)

宵のキッチン


コトコトとかぼちゃスープは湯気たてて鈴虫の鳴く宵のキッチン

こおろぎの消え入りそうに鳴く声に長袖シャツを着込みて朝餉

ときおりに消えては灯りまた消えるいつまで放置のトイレのあかり

朝々を歩く道辺に熟れし柿ひとつ貰おか誘惑微か

だんじりを引く乙女らの汗の顔はこの一日に賭ける渾身

秋祭り昼間見かけぬ青年が声高らかに音頭を取る

秋気裂き猛禽らしく鳴く百舌も春はのどかに鶯の真似

コスモスは雨にしなだれ彩乱れローランサンのパレットのよう

遠住みの娘の声が聞きたくて箱一杯に柿を詰め込む

山あいの池に真鴨のつがい来て遊べる朝をわれに乱さる

2008年10月14日火曜日


10月12日岸和田だんじり祭り(山側)

奈良県 仏隆寺

武士の威

秋の気の身に及びきし里山に百舌頻(し)き鳴けりなにを告ぐるか

手に入れし小さき冊子に師の俳句B29を詠いておりぬ

車椅子に今日も来たりてひと時をむらの合切伝えてゆきし

ペガサスのつばさ広げて天かける形の雲の黒くひろごる

壇上に倒れて逝きし歌人(うたびと)は細き身ながら武士の威保(も)ちて

あえぎつつ露踏みのぼる坂道の天に遊べる万の羊ら

暑き秋たちまち黒雲かむさりて雷鳴轟くあすかの棚田

曼殊沙華群れ咲く寺に老婆の手引きて石段登るは嫁か

この朝にたなごの幼魚を貰い受けいそぎ飼い方ウェブで探る

鈴虫もわが一族に迎え入れ産卵の床敷き聴き澄ます

2008年9月11日木曜日


那智の滝

夏盛り

盆参り汗をふきふき娘来る背を追い越せし孫ら引き連れ

「山里は星こわいほど」という子らに東京暮らしの夜空を想う

盆の客嵐のように帰り行きわれひとりなる素麺すする

真夏日の朝に水遣り昼寝して夕べも水遣り夜は水割り

つぎつぎと生まれし目高の一匹も死なせてならじと水槽増やす

一株の蓮は池面に広がりて睡蓮八株葉陰に消えし

野菜などいつも頂くご近所に手作り豊作の西瓜を配る

水神はいずく行きしや影もなく雨乞いもせで果樹は灼け立つ

那智ノ滝日照り続きて痩せやせて風にふられ白き身くねる

夏はああ盆に西瓜に原爆忌敗戦記念日麦藁帽子

2008年7月13日日曜日

ランタナと睡蓮池



ランタナが今年も咲きました。



休耕田で池を作り睡蓮とホテイアオイ
を植えたらホテイアオイが大繁殖。

紫の花をいっぱい咲かせています。

2008年7月3日木曜日

一族

風神は雲を追いやり西空を茜に染めて梅雨晴れ約す

五月雨に流されてきし亀とらえ猫居る家の一族とする 

地球規模なる洪水に備えよう箱舟拵え一族増やし  

めだかの子いっぱい生まれてどきどきす親になりたる昔のように

塵に付く眼は二つにてつつと寄るしたたかめだかの小さき生命

緋鯉から孵化を遂げしも可愛くてめだかの稚魚より遥か大きく

咲き初めし睡蓮一輪ピンク色わが思春期の心臓の色

鉢植えの笹百合咲くに小躍りしみずき枯るるを嘆きいるわれ

ハンバーグ食べて育つと切れやすき人になるとうスルメは如何に

てっせんを「けっせん」と呼ぶばあさんにふと癒やされて今日のいちにち

2008年6月9日月曜日

6月8日撮影会


奈良県宇陀市 滝谷花しょうぶ園


         花菖蒲

ビオラ

この夜は管弦楽に抱かれよう蛙の歌をしばし忘れて

曲目は「ビオラ協奏曲」なれば脇役楽器も今宵は主役

パンジーをバイオリンに例うれば花も楽器もビオラは地味か

季来るも新芽のままにとどまれる幼木みずきに水遣りつづく

さつき雨ひえびえ降るに濡れそぼち猫小走りに家路を急ぐ

メタボなるは飽食の罰と饅頭を禁じ耐うるは苦行にも似る

竹炭の窯を築きたりさあ焼こう明日の愉しみ一つ増えたり

ようやくに伸びにまかせし髪切りぬ生まれてこのかた幾百度目なる

晩酌にほろ酔い気分で一日を終えることさえままならぬ我は

狐狸たちの妖力失せて人の世に肉親襲う魑魅とり憑くか

2008年5月25日日曜日

写真展


         奥山雨情
雨の西吉野の奥山にカメラを濡らしての撮影。
「かつらぎデジカメクラブ」なるデジカメオンリーのカメラクラブが
5月24日~6月1日講師たる歯科医のギャラリーで2回目の展
示会を開催しました。そこに出展した4枚のうちの1枚です。

竹炭


黒光りする竹炭に万歳!




注文してしておいたドラム缶に細工した竹炭の窯が1年がかりでようやく完成。

近所のおばさんが手伝ってくれて、早速炭焼き開始。2度炊きで出来ました!


2008年5月7日水曜日

室生寺


5月6日快晴 室生寺五重塔 平安初期に建立
女人高野としても知られている。

2008年5月4日日曜日

野口さん夫妻来紀




4月27日。野口さん夫妻は軽自動車を駆って埼玉から来てくれました。

真鴨の君


        屋根の小春

雌の首咥えて離すことなかれ真鴨の君にエールを送る 

これでもかこれでどうかと進化してここまで来ました孔雀の尾羽は

城奥の姫のかそけき吐息かも石の隙間にたまる花びら

天覆う枝垂桜のしだれ枝に共に揺られて蜜吸う目白 

山桜雲湧くごとく咲きしのちぶなの林にまぎれ消えたる

萌え初めし緑の山に目をこらし桜咲きいしあたりをさがす

花ことば「裏切り」という花蘇芳(はなずおう)いく度聞くもその名忘れて

防鳥の縄を緻密に張り終えて鷺来ぬがややつまらなき 

鯉呉れて「鮒は捨てよ」と言うけれど先住者には邪険にできぬ

わが猫は屋根に上るも戻れなく降ろせと鳴いて主呼び付くる

2008年4月23日水曜日

恋人岬

招かれし卒園式の進行は軍隊のような規律をもちて

この年の桜を待てず逝きし友何処の山の花に遊ぶか

山住みの友を訪ねて登る道ヘアピンカーブにポスト佇む

見晴らしの「恋人岬」に立ちいるは「ここに小便したらあかん」とう札

かのころの疎開暮しの屈辱をいまさら語る同級生ら

女性から「同窓会ありがとう」とのはがき来ぬ写真と名簿を繰り返し見る 

鯉の子らこの冬を耐え一割が生き抜き温む水にたわむる

睡蓮は春のきざしにおずおずと新芽を水面に向け伸ばしくる

春日さし不妊にされしわが猫は恋も知らずに里に出歩く

春彼岸位牌あれこれ眺めては知らぬ名前に話題の及ぶ

2008年4月10日木曜日

和歌山城


  
和歌山城の桜は温かい風にさらさらと散っていました。
  
石組の隙間にたまる花びらは紀の国姫の秘めたる吐息

2008年4月8日火曜日

紀の川市S家の枝垂れ桜


                     
歌友のSさんのお家は長く続いた神官の家柄。
樹齢300年はあるという枝垂桜が、小高い所から紀の川に寄り添う町々を見
下ろしている。
                                      
天覆う 枝垂れ桜の しだれ枝を 揺らし蜜吸う 目白ひと群れ

九度山町 真田庵の桜


      
真田庵は真田昌幸・幸村が閑居した屋敷跡に建つ寺院。
   
かくれ住んで花に真田が謡かな  与謝野蕪村

2008年4月3日木曜日

奈良県吉野町本善寺


     
吉野川の南岸にある吉野地方の真宗の拠点の寺。

2008年3月19日水曜日

雪女

朝朝を追い払いしに今日来ぬはなぜか気になるやせ身青鷺

世をこばみ手に手をとりて天へゆきし若きふたりは風の峠に 

心中をはかりし高野の学僧に近松の代の情念憑きしか  
  
思わざる遠き人よりチョコレート今日の感謝はキリスト様に 

雪女夜毎来たりて白き息かくるも蝋梅凛と咲きつぐ

春一番我に向かいて鞭振るか惰眠を覚ませ起きて働け

わが猫は二歳の若さで恋知らず身も世もあらずただ寝るばかり

指揮棒を掲げし一瞬静まりて怒涛の楽饗弾けるを待つ
―運命交響曲演奏会にて―

ドラマにて何人死ねば終るやら刑事の推理もたつくうちに

庭に先ず黄の水仙を植えつけてひとり朝餉の支度にかかる