世をこばみ手に手をとりて天へゆきし若きふたりは風の峠に
心中をはかりし高野の学僧に近松の代の情念憑きしか
思わざる遠き人よりチョコレート今日の感謝はキリスト様に
雪女夜毎来たりて白き息かくるも蝋梅凛と咲きつぐ
春一番我に向かいて鞭振るか惰眠を覚ませ起きて働け
わが猫は二歳の若さで恋知らず身も世もあらずただ寝るばかり
指揮棒を掲げし一瞬静まりて怒涛の楽饗弾けるを待つ
―運命交響曲演奏会にて―
ドラマにて何人死ねば終るやら刑事の推理もたつくうちに
庭に先ず黄の水仙を植えつけてひとり朝餉の支度にかかる