コトコトとかぼちゃスープは湯気たてて鈴虫の鳴く宵のキッチン
こおろぎの消え入りそうに鳴く声に長袖シャツを着込みて朝餉
ときおりに消えては灯りまた消えるいつまで放置のトイレのあかり
朝々を歩く道辺に熟れし柿ひとつ貰おか誘惑微か
だんじりを引く乙女らの汗の顔はこの一日に賭ける渾身
秋祭り昼間見かけぬ青年が声高らかに音頭を取る
秋気裂き猛禽らしく鳴く百舌も春はのどかに鶯の真似
コスモスは雨にしなだれ彩乱れローランサンのパレットのよう
遠住みの娘の声が聞きたくて箱一杯に柿を詰め込む
山あいの池に真鴨のつがい来て遊べる朝をわれに乱さる