2009年12月12日土曜日


合歓の花

コスモス

秋寒

aaa
秋更けてこおろぎひとつ鳴き澄むに数多の虫の生き死に思う

秋更けて蓮はあわれに枯れてゆく地下深き根を太らせるため

秋寒に覚めて孤独に苛まれ野良より帰りし猫を抱きあぐ

柿狩りに来し幼馴染は嬉々として連れたる妻にあれこれ指図す

昌雄とう翁独りで旅立ちぬ遠く復員兵たりしあなたは

三日月は西に鋭く際立ちて通夜の帰りは殊に身に沁む

電話の向う亡父の同僚とう媼長々昔の逸話を語る 
aaa

2009年11月17日火曜日


「コスモスの丘」
和歌山県有田川町コスモスパーク

母の幻影

ああ
月影に遠住むひとを映してはしたたかに酔い時空を超ゆる

晩年の母の幻影天井は虹を懸けたる花園と化す

蟋蟀の数多の声に透けて鳴く鈴虫ひとつ闇を鎮むる

台風にうち倒れいしコスモスは足を傷めし競走馬とも

秋晴れの舟に揺られて花嫁は岸辺の母にVサインする

名を残す数多の絵画のコレクション無名の女工の涙の嵩に

少年を乗せて遊ばせし老い柿は葉のしおれつつ実を生らしおり
あああ

2009年10月18日日曜日

白昼夢

ああ
唐突に眼前過(よ)ぎる鬼蜻蛉ゆく夏に見る白昼夢かとも

向日葵の畑に秋の気配してプロペラ飛行機低空を飛ぶ

信仰の薄きを君は常いうも彼岸の来れば祖父母を偲ぶ

小鍬持ち土を這うがに耕しし亡母の畑にブルーベリー生る

大合唱ホールいっぱい響動もして「金銀を崇める王は直ちに滅ぶ」と

西洋の神を讃えるオラトリオ仏の国の我も聴き入る

炎天の車道にころがりひからびし狸一匹コスモス前線 
ああ

2009年9月21日月曜日


ガンダム  09/8/26佐藤優氏撮影

青い山脈

00
観たという「青い山脈」筋訊けば「変しい変しい」のみ覚えおり

夕餉どきグラスに満たす焼酎の琥珀色にて倖を呼ぶ

苛立ちを猫の背に向け「いいかげんにしろ」とまたまた悪態をつく

旅だちをせかされ未熟の子燕は小さき羽根ふり落ちて死にたり

夏日降る熊本城に蝉繁くガラシャ武蔵の霊魂燃ゆる

いまはむかし西海道の戦乱と燃ゆる若者白球競う

一株の蓮は池面を占拠してこの世の夏と花咲き誇る
00

2009年8月6日木曜日

日を食べる悪魔

mmm
蓮の葉は雨粒重き銀色に溜めては傾ぎ池へ転がす

母ともに仰ぎし銀河黒々と未知なる世界に慄きしこと

遠き日に煤硝子もて日を食べる悪魔の仕業を仰ぎ見しこと

わが身体引力強く素粒子のあまた集まりメタボの烙印

幼子の重み抱きあげ衰えし我が体力の程合いはかる

食細り「熱中症」との診断に「しっかりせよ」とわが猫叱る

「モチーフはおうちにいるでしょう」と言われ我が猫ながめて指折りて詠む
aaa

2009年7月13日月曜日


友人佐藤優氏の写真

友人佐藤優氏の写真

アラフォー

aaa
わが猫はけだものとして夜を過ごし明けに戻りてわれにすり寄る

三食の菜(さい)にきのうもまた今日も豌豆はいま主食の如し

幼鯉は餌と見紛い我が指をつつきて群れる五月晴れの日

吾が娘いまやアラフォー夜通しの介護のジョブに化粧も落ちて

餌を運ぶツバメをねらう猫叱る「旅立つまでを見守りたまえ」 

新型に間違えられてはかなわぬとただの風邪にも外出ならず

百円のサービス券は期限切れ財布の底より出でし一枚
あああ

2009年6月11日木曜日


読谷村 残波岬  2009/4/30撮影

沖縄海洋公園イルカショー

沖縄美(ちゅ)ら海水族館

ああ沖縄

ああ
デモ連ね「返せ」と叫びし沖縄のホテルの棚に折鶴一羽  

夜も更けて砂糖黍畑に風騒ぐ沖縄びとの魂らがさわぐ

本土への復帰の年を尋ねしも首を傾げるホテルウーマン

長々と続く鉄柵沖縄のライトはアメリカ左ニッポン

沖縄の五月の海は沖遥か陽に輝きて軍船を見ず 
          
リゾートの珊瑚の砂に寄せ返す波にたわむる裸の孫は

無人駅ぽつりぽつりと人寄りて銘々黙して電車待ちいる

ああ

2009年5月12日火曜日

aa
母の丈抜きし細身の兄妹は桜の下に立ちて眩しも

ひさかたのツバメのさえずり亡母聞くかわが淀みいしこころハレルヤ

待望の燕は奥に迷い込み畳に糞を落とすもうれし

毛の抜けし狸一匹徘徊すわびしき村にも差別なき春

此度こそ更新したかと孫載せる嫁のブログを今また開く

庭の木を〝日向水木〟と命名す深夜におよぶ検索の末

うら若き山伏の法螺たどたどし初午護摩供盛り上がり欠く
ああ

2009年4月19日日曜日


歌友 菅原邸の枝垂桜 3月28日

吉野 4月3日

野良猫

nn
野良猫は如月に死す人間の憎悪を込めし団子を喰らい

「天国で物持てるならパソコン」とサラリーマンの一位の答え

パソコンにこころ疲れて喉渇き立ちし厨に余寒の闇満つ

うなだれて友に遅れて歩む子の通学風景我に重なる

室満たす大音響のハーモニー独りの無聊一人の快楽

幸せはこれから来るか幼らの流す女雛はゆらゆらとゆく

初午の柴燈護摩供に投ぜらる万の願いに我も一願

2009年3月8日日曜日


紀の川市 粉河の雛流し 紀の川の支流中津川にて 3月3日

西国三十三ヶ所 第三番 粉河寺 初午 護摩供 3月2日

蕗の薹

ああ
凍てつける道ひたすらに登りきし高野結界魂まで冷ゆる

石の道踏めみて進める御廟道大寒の気に魂も凍てつく

昔むかし布団被りて遠吠えの狐の声に身をすくめいし

枯れし木にポップコーンを播く翁忽ちにして梅の花咲く

蕗の薹かなしきまでにほろ苦くふと気にかかる遠住みの子ら
    
混沌の世界をよそに大昼寝生きのつらさも神にゆだねて

摘むきっかけ失いし小指の爪伸びて今日もはたせずひと日暮れたり
qq

2009年2月13日金曜日

牡丹寺

sssss
蝋梅はなべての枝に黄を灯し遙か山脈白銀に耀る

西行の像を仰ぎて御堂みて妻娘の墓参も小春日ツアー

雪残る西行庵を偲ぶとき妻娘の塔も寒きに震う

西行の身のさすらいも山頭火も共に世の澱清める旅か

訪ねたる季節はずれの牡丹寺ただ一輪の凛と咲き澄む

北欧に生れし楽曲時を越え南に生れし指揮者が統べる

生きているゆらゆら揺れて生きている薄氷張る槽の稚鯉は
qqq

2009年2月8日日曜日


当麻寺の寒牡丹 1月18日撮影


奈良県葛城市 飛鳥時代建立 当麻寺

コンニャく

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コンニャクの窯をしつらえ薪くべる平家の里より嫁ぎ来しひとは

コンニャクの芋を煮立ててすりつぶし固めてゆがき味噌付けて喰う

冬日和もくもくもくと炭に焼く今や農には不要の竹を

鯉沈み動くを止めて冬を耐う心を鬼に餌はやるまい

渋柿は採られぬままに空に熟れ梅の枯れ枝に烏瓜点る

人間は顔向け合いて食すとう猫はおこぼれ欲りて顔見る
nnn