2008年11月14日金曜日


奈良県吉野群 天川村 御手洗(08.11.8撮影)

宵のキッチン


コトコトとかぼちゃスープは湯気たてて鈴虫の鳴く宵のキッチン

こおろぎの消え入りそうに鳴く声に長袖シャツを着込みて朝餉

ときおりに消えては灯りまた消えるいつまで放置のトイレのあかり

朝々を歩く道辺に熟れし柿ひとつ貰おか誘惑微か

だんじりを引く乙女らの汗の顔はこの一日に賭ける渾身

秋祭り昼間見かけぬ青年が声高らかに音頭を取る

秋気裂き猛禽らしく鳴く百舌も春はのどかに鶯の真似

コスモスは雨にしなだれ彩乱れローランサンのパレットのよう

遠住みの娘の声が聞きたくて箱一杯に柿を詰め込む

山あいの池に真鴨のつがい来て遊べる朝をわれに乱さる

2008年10月14日火曜日


10月12日岸和田だんじり祭り(山側)

奈良県 仏隆寺

武士の威

秋の気の身に及びきし里山に百舌頻(し)き鳴けりなにを告ぐるか

手に入れし小さき冊子に師の俳句B29を詠いておりぬ

車椅子に今日も来たりてひと時をむらの合切伝えてゆきし

ペガサスのつばさ広げて天かける形の雲の黒くひろごる

壇上に倒れて逝きし歌人(うたびと)は細き身ながら武士の威保(も)ちて

あえぎつつ露踏みのぼる坂道の天に遊べる万の羊ら

暑き秋たちまち黒雲かむさりて雷鳴轟くあすかの棚田

曼殊沙華群れ咲く寺に老婆の手引きて石段登るは嫁か

この朝にたなごの幼魚を貰い受けいそぎ飼い方ウェブで探る

鈴虫もわが一族に迎え入れ産卵の床敷き聴き澄ます

2008年9月11日木曜日


那智の滝

夏盛り

盆参り汗をふきふき娘来る背を追い越せし孫ら引き連れ

「山里は星こわいほど」という子らに東京暮らしの夜空を想う

盆の客嵐のように帰り行きわれひとりなる素麺すする

真夏日の朝に水遣り昼寝して夕べも水遣り夜は水割り

つぎつぎと生まれし目高の一匹も死なせてならじと水槽増やす

一株の蓮は池面に広がりて睡蓮八株葉陰に消えし

野菜などいつも頂くご近所に手作り豊作の西瓜を配る

水神はいずく行きしや影もなく雨乞いもせで果樹は灼け立つ

那智ノ滝日照り続きて痩せやせて風にふられ白き身くねる

夏はああ盆に西瓜に原爆忌敗戦記念日麦藁帽子